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嘘と創作を混ぜて語る日記的なもの
2025/07/12 [21:14:30] (Sat)
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2019/01/07 [19:33:45] (Mon)

皆本金吾 


拍手[7回]


 えっ、戸部先生のすごい話?聞きたいの?本当?いっぱいあるよ!
 そうだね、えっと例えば……

 長期休みの時、ぼくが戸部先生のところで修行してるのは言ってたっけ。うん、そっか。
 先生はすごい人だから、その名も天下にとどろく!らしくて、借りてる家によく武芸者が殴りこんでくるんだ。
 ……そういえば、前にみんなに相談したこともあったよーな気がする。
 相談してもどうにもならないのはわかってたけどさ……。ありがとう虎若……。

 そうそう、そのね、武芸者がね、ほんとにいろんな人が来るんだ。
 やっぱり刀を使う人が多いけど、槍を使う人も多いし、鎌とか、鎖とか。あとは暗器を使う人もいたかなあ。
 ううん、忍者じゃなかったと思う。本人が忍者じゃないって言ってたし、なんかそういう…道場?があるみたい。
 怖く……そりゃあ武芸者って言っても山賊崩れとか、辻斬りとかも多いから、怖いっていえば怖いけど。

 でもさあ先生、すっごく速いんだよ。
 斬る手が見えなくて。

 どりゃああって挑んできた人とすれ違って一閃、ですぐ終わっちゃうんだ。

 構えて向き合っただけで、抜かないで勝負が終わったこともあったし。

 最初の頃は何が起こってるのかさっぱりわからなくってさ。
 教えてもらってから何が起きたのかようやくわかってきたけど、でも今でも全然見えない。すごいなあってしみじみ思うよ。ぼくもあんな風になりたいなあ。
 えへへ、そうかなあ、ありがと。
 それでね、まあそういう腕試しにくる人たちって、突然スキありー!って襲いかかってくる人たちと、勝負しに来ましたって果たし状を持ってくる人たちの2種類いてね。襲ってくる人の方が多いけど。果たし状持ってくる人もいろいろなんだけど……あのね。
 先生は本当の本当にすごいなあって思ったんだけど、あのね。


 オバケが果たし状持ってきたことがあったんだ……。


 そのときは町外れの破れ寺にいたんだ。あ、うん……前の日に家を追い出されて……。
 明日のご飯何がいいかな、干し飯がまだあるから味噌汁にでもとかして、あっ鍋がない……とか考えながら寝てたんだ。
 ふっと目が覚めてうつらうつらしてたら、外から声がするのに気付いた。

「ーー、……で……ーーった」
『そこを是非に』
「ーーあるまい。約定は……れ」
『おお、おお!勿論だとも』

 また武芸者だ!眠かったけどがんばって起きて、そしたら先生が静かに戻ってきた。
「起きたか。今し方、果たし状を受け取った。お前は……」
 果たし状を受けるときは、先生はいつも一人で行く事が多いから、ぼくはここに残るんだろうなって思ってたんだよ。それか、町のどこかで待ち合わせとかさ。
 でもそのときは違った。
「お前も来い。……その方がいいだろう」

 そう言ってすぐ出ようとするから、あわてて荷物をまとめようとして、先生に止められた。
「場所はすぐそこの墓場だ。荷物はそのままでいい」


 墓場?……夜中に?


 ちょっと嫌な予感がしたけど、夜中に墓場っていうだけで怖いけど、いやでも、怖、いや!勇気を出せ!皆本金吾!
 ……そう思って先生のあとに続いたんだけどね、もう、そのね、ぜんぜんダメだった。
 もう見るからにダメ。
 武芸者は一人だけじゃなくって、見物人みたいなのも何人も居たんだけどさ。
 もうねえ、ほんとうにね……。


 も〜、全員、体が透けてるんだよお〜……。


 足が片方ない人とか、肋骨が見えてる人とか、血まみれの武者とか、顔から目玉が落ちてる人とかさ……み〜んな体がぼんやり光って、透けててさ……。
 ぼくはフッ…と鼻から魂が出て行くのを感じました……。
 すぐに先生に捕獲されたけど。

「せ、せ、せせせせせせんせええええええ」
「金吾、これも修行だ」
「おおおおおおおおおばおばオバババババ」
「剣を鍛えているとこういうこともある」

 ほんとに!?ほんとですか先生!?剣術やってるとオバケ挑んでくるんですか!?
 オバケ斬るのは必須なんですか!?斬れないとダメですか!?

 いろいろ聞きたいことはあったけど、ぼくが泡吹きそうになったり腰抜かしそうになったりしてる間に、その、武芸者の人が構えて前に出てきた。

 そう、武芸者の、……幽霊……。

 浪人ぽかったなあ。眼帯しててさ。アゴに刀傷もあって、大小ふた振りさしてて。
 胸がちだらまっかになってたから、あれが死因かな……って現実逃避してた。

 鼻から魂が抜けないように必死に手で押さえてる間に、勝負は決まってた。 ……あっけないって、そりゃ、だって戸部先生だもの。勝負は一瞬だよ。

 お二人が構えたのが見えて、いや、先生は構えてるかどうかもわからない自然体だったけど。
 なんだか空気がぴりっとして、ふうっと風が吹いたような気がして、先生が動いたような気がして。
 鍔鳴りの音もさせないで、先生は静かに納刀してたよ。
 それでおわり。……でしょ!?かっ……こいいなあ〜!わかる?そうなんだよ〜!
 あ、はい。うん。それでね。

 ボトッとオバケの首が落ちて、ひええって思ってたら、首がゴロッと動いてこっち向いたんでぼくはまた気絶しました。
 鼻は押さえてたんだけどさ。魂って耳からも抜けるんだね。初めて知ったよ。ははは……。
 で、先生がまた魂を捕まえてくれて、耳から戻しながら言うんだ。

「おや、骨は断っていないはず……」
『いやはや見事な腕前。儂の首は元から切れておりました故にの』
『喉首に新たな傷をこさえてしまい申したなあ』
 とか生首が笑ってて、首なしの胴体がそれを拾い上げたとこまでは覚えてる。

 ……気付いたら朝だったよ。
 夢かな?夢って思いたいなあ、夢ですよね?と思ったけど、怖くて先生には確認できなかったや。境内になんか紙を燃やした跡があったのは……気のせい……かもしれないし……。
 でも先生、破れ寺から出るときに、わざわざ墓場まで行って「南無」って軽く手を合わせてたんだ。
 ……そのあと、ぼくの頭に手を置いて、なんでもない事みたいに言ったんだ。

「お前もこれくらいはできるようにならねばな」

 ……わ、あわ、あわわ……!ぼく、オバケ斬れるようにならないとダメかな!? ダメなのかなあ!?ねえ!?どうしよおお……!
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