「ぎゃー何やってんですか先輩!あんなぶっ壊して、また学園総出で毒虫捜索になったらどうするんですか!?ていうかなりますよ!?」
「細かい事は気にするなぁ!どんどーん!」
「少しは気にしてください!」
「滝夜叉丸先輩!次屋先輩が居ません!」
「またかァァァ三之助ぇぇぇ!」
山裾の茂みの中でなんとも騒がしい応酬がなされている。
いつもは前髪も華麗な少年、滝夜叉丸の華麗な顔(かんばせ)には土、髪には木の葉、表情には疲労。
彼にとって、委員会活動は試練の時である。
学年一(略)な滝夜叉丸にとって。
――毎回毎回暴走しまくる無茶振りそのものの委員会活動をギリギリこなせる量に押しとどめ、毎度毎度開始五分と経たず行方不明になりかける後輩に縄を付けつつ、開始五秒で走り去る委員長の痕跡を鬱蒼とした森の中どうにかこうにか辿り、かつ遅れがちな一年二年を気遣って背後に気を配りつつ、全員のペース配分を考えながら山中を駆け上る――
などということはこの天才(略)滝夜叉丸だからこそできるのであって、平々凡々なそこらの連中が同じようにこなすのは無理というものであろう。
しかし私はそれを毎日、楽々…………………とは言えないかもしれないがしかしこなしているのだ、すごいぞ私!流石は学年一の天才であり戦輪の申し子(略)平滝夜叉丸だ!
「そうだ……ふふ……私はすごいんだ……天才であり……gdgdgd」
「た、滝夜叉丸先輩元気出してください」
その天才であるところの滝夜叉丸は、両手を地面について激しく項垂れていた。
現実逃避していたとも言うが、彼の前には半壊した生物委員の小屋があった。その横には芋虫のようにぐるぐるに縛られた我らが委員長、七松小平太。
口を尖らせてびちびち跳ねる彼を鬼の形相で縛っているのは、用具委員長食満留三郎。
そして滝夜叉丸の隣で真っ白な灰になって燃え尽きているのは、生物委員長代理、竹谷八左エ門。
「私がもっと必死に止めていれば……」
「ああ……ハハ……いや、いつものことさ……」
竹谷はいつもの快活な笑顔が嘘のような儚い笑みを浮かべた。