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嘘と創作を混ぜて語る日記的なもの
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2014/11/16 [23:04:57] (Sun)

尾浜勘右衛門


拍手[6回]





 人に追われてる時さあ。
 化け物見ちゃった事あるんだよねぇ。いやマジ。

 ちょっと仕損ねちゃってさ、三人くらいに追われてたんだぁ。
 あ、夜ね、森ん中で。
 あのさほら、あるじゃん、東の御稜って呼ばれてる山。麓に美味い団子屋がある……そうそう其処。玄坊山。

 其処さァ、俺が化け物見たのは。

 あすこってさ、夜は絶対入るなって言われてんだってね。やー、俺も後で知ったんだけど?
 そん時は知らなかったからさあ、入っちゃったんだよね。追われてさ。

 別に口封じしなきゃならないワケでもなかったし?ていうか多勢に無勢ですし?
 木の陰にはりついて息を殺してたんだけどさあ、もーそいつらしつこいのなんのって!
 一刻くらい経ってもまーだその辺うろうろしてんの!まあ俺がいるからなんだけど。


 そんで俺も走り通しでけっこー疲れててさー、あーこのまま諦めてどっか行ってくんねーかなーって思ってた。
 えーだって本当あん時は草臥れてたんだってー。ヘトヘトだったんだもん。

 それで暫くじっとしてたんだけど、急にぞわああっって物凄く寒気がした。
 反射的にがばっと起き上がっちゃったけど、今思うとそれで見つかってもおかしくなかったよね。よく無事だった俺。

 いやだってさあ、ホンット、全身の毛が逆立つっていうの。あんな感じの事言うんだろね。
 ひたすら、何か来る!としか考えられなくてさ。



 来る。
 何か、来る。



 何にも分かんないのに、ただひたすら悪寒がすんのさ。
 ハチ、お前あすこに居たらマジで髪逆立ってたかもよ。そういうの敏いじゃん。

 何か来るっていう嫌な確信だけがあって、追手の三人も戸惑ったみたいにキョロキョロしたり、身構えてたり。自然と三人固まって死角がないような陣構えてたから、あのおっちゃん達けっこーな手練だったのかもね。


 ……。俺さぁ。
 ちょっと離れた場所にいたから、見えちゃったんだよね。




 そいつは、真上から来た。




どぉおん!!!!


 木の上に居た俺が慌てて幹にしがみ付くくらいの、とんでもねぇ衝撃さァ。
 戦場で砲弾が地面に落ちた時だって、あれ程の音は鳴んないね。

 地響き立てて落ちてきた其れは、三人のうち一人を下敷きにしてた。
 下敷きになったやつはもうぴくりとも動かなくて……あんなん直撃受けたら、ってぞっとしたよ。


 そいつは……黒くて、とにかくでかかった。


 変なんだ。真っ黒な塊に見えるのに、輪郭がぼやけてて……あと、そう。
 影がなかった。


 最初は潰れた饅頭みたいな形してたんだけど、そこから上にニュウッて伸びて、しゃもじみたいな形になってさ。
 ちょうど雲が晴れて月明かりが射しこんでたから、よぉく……視えちゃったんだよねぇ……。

 そいつは餅みたいにしゅっと伸びて、跳び離れて立ってた別の、あの俺を追ってた忍者を引き倒した。
 倒されたやつはそりゃもう、死に物狂いで暴れてたけど……そいつは、全然びくともしなかった。
 のったりと引き倒した奴の上に乗っかると、細い腕……みたいな……イカとかタコの足みたいな、なんかそういう腕見たいのを出してさ。



ぴひゅんっ

 風を切る音がした。


 引き倒されたやつの喉から、血が噴き出した。




 もう、さ。
 なんてゆーか。
 そこで逃げればよかったよね俺。
 なんで逃げなかったんだろ。

 そいつは、十尺はあろうかっていう体をぐううって曲げて、どでかい一ツ目をくわりと開いた。
 断末魔にもがいてる男の顔を、じいっと覗き込んでたんだ。

 男が動かなくなるまで、ずうっと。



 それから、そいつはぎょろりって血走った目玉を動かして――




 ――俺の方を向いた。







 もう逃げたね。
 逃げましたよ。
 一生で一番ってくらい走りました。

 夜が明けるまでひたすら走りまくって、前に拠点にしてた寺に転がりこんでからぶっ倒れた。


 ん?んーまあちょっとばかし熱出したりはしたけど……それよりさ。
 後で調べてみたら、あの山、真っ黒なおっかねえばけものがいてさ、夜にはたまに狩りしてるから入っちゃあんめえよって云われてたらしいんだよね。
 いや麓の団子屋のおばちゃんに聞いたんだけど。

 いやー……おっかねえー……って思って、え?なに?

 うん、そだよ。玄坊山の麓の団子屋。
 えーだってあの団子屋何度も行ってるから、団子屋までなら大丈夫かなって思ったし。それに美味しいんだもん。
 なんだよー!いいだろーあのばけもんの事分かったんだから!




同室のコメント


久々知:
 はああ!?勘ちゃんそんな怖い目に遭ってたのか!?
 俺は全然知らなかったぞ!?
 潜入先で追手三人が戻らないって情報聞いて、『流石は勘ちゃんなのだぁ』なんてホッとしてたのに。とんでもないことになってたのだ……。

 でも、あの山から拠点の寺までは確か山三つは離れていたハズ。
 それを夜に、しかも休みなしで駆け抜けたのか。勘ちゃんは凄いな。

 ……というか勘ちゃん、それだけ恐ろしい目に遭った山の、麓の団子屋に「だって美味しいんだもん」とか言って今も通っているんだが……。
 ……やはり勘ちゃんは凄いのだぁ……。

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