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嘘と創作を混ぜて語る日記的なもの
2025/07/05 [06:14:01] (Sat)
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2014/12/14 [22:25:57] (Sun)

時友四郎兵衛


拍手[10回]



 えと、山の中ではね。
 こっから先に入っちゃいけない、っていうしるしがあるんだよ。

 んーん、決まった形って言うのはないんだけど……。
 ボロの塊だったり、キレーな綾紐のついた鈴だったり、なんか変な色の手ぬぐいだったり。真っ白な葉っぱばっかり集めたやつもあったかなぁ。
 そういうのは綺麗なほうでね。

 ぼくが見たのは、魚の骨ばっかり十何匹分もまとめて吊るされてるのだったな。

 真っ白で、腐った肉とか土とか虫とかもなぁんにもついてない骨なのに、すっごくクサくてねぇ。思わず先輩と一緒に鼻つまんじゃったんだな。
 あ、うん、体育委員会の活動中でね、滝夜叉丸先輩と一緒だったんだぁ。

「いいか四郎兵衛」
「はい」

 先輩は何だか渋柿でも食べたみたいな顔しながら言ったんだな。

「こういった、明らかに何者かが作ったものらしい印を見たら、この先へ立ち入ってはならない」
「何かあるんですか?」
「そうだ。何かがある、というしるしなのだ、これは。何があるかわからぬ先にわざわざ踏み入る必要はない」

 いつもならその後にペラペラペラ~って自慢話が続くんだけど、その時はそれだけしか言わなくて、あれ?って思って。先輩お腹でも痛いのかな。

「先輩おなかでも痛いんですか?」
「はぁ?いきなりどうした?はっ、まさかこの麗しい私~(以下自慢話)~案じてくれたというのか!?流石はこの~(以下自慢話)~後輩!私の采配に抜かりなし!嗚呼自分の才能~(以下略)~」

 ってしばらく先輩うるさかったんだけど、道を変えて進んでたら、先輩の口と足がぴたっ、って止まった。

「……こちらもか」

 先輩がにらみつけた先には、またあのしるしがぶら下がっててね。
 えっ、う~ん、最初に見たのとは違うと思うんだな。
 ものすごぉくクサかったのはおんなじだったけど、魚の骨の数も違ったし、大きさも違ったし。

 この時までは、何だろう、なんだか変なもの見つけちゃった、ってのん気に思ってたんだぁ。


 そしたら、突然先輩がキリッとした顔になったから、ぼくも気を引き締めた。
 あ、えと、そのね、体育委員会はね、曲者とか、山賊とか、浪人とか、狼とか、熊とか、そういうのによく遭うんだよ。だからね、自分で気配とか分からないうちは、先輩の様子を見て身構えられるようにならなくっちゃいけないの。
 ええ~、そんな事ないんだな、慣れると普通に分かるよ?

 あ、うん、それでね。

 先輩が急に走り出したからついていったんだけど、なんだか先輩焦っててね。
 急に立ち止まって、ぐるっ、周りを見回して、

「……不味いな。
囲まれた」

 えっ、と思ってぼくも周りを見回してみたら、なんかね、たくさんあったんだよ。


 あのしるしが。


 ぼくが見えただけで、四個か、五個もあって、でも先輩の目線からするともっとあったのかもしれない。

 流石にちょっとゾッとしちゃった。


 おまけにニオイもものすごくってねぇ。ぼく涙目になっちゃった。
 でも、なんていうのかなぁ。先輩はキビしい顔してるんだけど、ぼく、何がマズイのかよく分からなかったんだな。曲者とかだったら分かりやすいんだけど……。
 それできょとんとした顔してたんだな。
 そしたら、滝夜叉丸先輩はちらってぼくを見て、ふふん、ていつもみたいに自信満々に笑ったんだ。

「この私がついているのだ、安心していいのだぞ!さあいざ帰ろうではないか!」

 それでね、ぐいって引っ張るみたいに手を握ってくれたの。
 何が何だか分からなくて頭にはてなマーク浮かべてたから、まあ、先輩がそういうんなら大丈夫かぁ、てちょっとだけ安心したんだな。

 だけど、ちょっとおかしいなあ、って思ったんだ。
 何かある時ってね、先輩たちは必ず両手を空けておくんだな。
 滝夜叉丸先輩なら、戦輪を使うためにだよね。七松先輩も、身構える時は大体いつも荷物とか下において、両手は空けておいてるんだ。
 だから、何か危険を感じた時に誰かと手を繋ぐなんて、おかしいなあって。


「……ああいった印には、人が作ったものと、人ならぬものがつくった物がある」


 先輩に手を引かれて歩いてたら、まっすぐ前を向いた先輩がものすごくひっそりした声で教えてくれた。
 うん、あのね、唇をほとんど動かさないで話すやつ。低くって静かで、普段の先輩とはぜんぜん違う声なんだけど、曲者に遭った時なんかはよく聞くよ。


「どちらにせよ近付かぬに越したことはない。が、人ならぬ者が作った印には、決して近付くな。それを踏み越えてしまえば、あちらに招かれてしまうとも言われている」


 えっ、と思って見上げたぼくを励ますように先輩は笑って、え、うん、普通に……もおー三郎次ったら、滝夜叉丸先輩だってふつうに笑うんだな。

「なに、そう深刻に考える事もない。ただのイタズラの可能性も存分にあるからな!まったくけしからん事だ」

 そう言って先輩がまたいだ木の根っこに足をかけて、ぼくもよっこらせって乗り越えたんだ。

「そうなんですかぁ」
「ああ、」





どっ、


あははははははははははははははは!!






 いっせいにだよ!
 誰もいなかった、ぜったいに誰もいなかったはずなんだな!
 そのはずの後ろから、大勢の笑い声!

 ビックリしてとび上がったぼくを先輩は一瞬で担ぎあげて、「目と耳を塞いでいろ!!」って叫んですっごい勢いで走りだした。
 だけど担がれた時に一瞬見えちゃった。

 あの印の魚の骨がね。
 かっしゃかっしゃ鳴りながら、まるで生きてるみたいにびちびちうねってた。



どっ、きゃはははははははははは、あはははははは!!

けらけらけらけらけら!

うっふふふふふふひひひひひひひひひい!!

えっへへ、えっへっへっへ!

ひゃははははははははぎゃははははははははへはは!!

げらげらげらげら!……

…………

……



 笑い声はみるみる遠ざかったけど、ずうーっと走ってきても、まだ遠くに笑い声が聞こえてるような気がしたなあ。
 先輩のサラサラの髪に顔うめて耳ふさいでたんだけど、もう大丈夫かな、ってそーっと顔上げようとしたら「見るなと言っただろう!」って怒られちゃったんだな。

「……っ私を馬鹿にしおって……!」


 って言ってたけど、あれどういう意味だったんだろう?
 笑ってたから??
 なあに左近。……そうかなあ、からかわれたのかなあ。わかんないや。


 う?うん、そのあとちゃんと学園に帰れたよ。だいじょうぶ。




 うん……ぼく、確かに怖かったんだけどね。その時のことで一番衝撃的だったのはそれじゃないんだな。

 先輩の髪がかあちゃんよりサラッサラだった事なんだな。

 ……えっだって七松先輩はぐしゃぐしゃにするし、次屋先輩はしゃらんら~ってしてるの見ると必ずうげって顔するし、金吾とぼくは「ほえ~」って見てるだけだし、委員会の誰もキョーミなかったから知らなかったんだな。
 けど、サラストランキング入りって実はすごかったんだなあって思ったよ~。






先輩のコメント

滝夜叉丸:
 しるし?
 ……山の印のことか?
 ふっふ、この私に聞いてくるとはなかなか見所があるようだな!私の~(以下自慢話)~はっ、待、待て!まだ話は……うむ?

 ほほう、四郎兵衛に聞いたのか。
 そうだな、そもそも、学園の敷地内に我々体育委員会の把握していない印があるという時点で、侵入者がいるという事なのだ。
 曲者や旅人の印ならば速やかに外さねばならないが、もしそれが人ならぬ者の拵えたモノである場合、そうはいかない。
 なんせ奴らは悪戯気分で人の一人や二人、容易く連れ去ってしまうのだからな。

 あれはそうタチの悪いものではなかったようだが……そう、狐狸の類だろう。恐らくだが。
 しかし、見極めができるまでは下級生には印の撤去はさせない、また立ち会わせない事になっているのだ。幼い児というのは惹かれやすいものだからな。

 しかしながら今回おちょくられた私の自尊心はそう安い物ではない!

 見ていろ狢め、喜八郎の罠と三木ヱ門の種子島、そしてこの~(以下略)~戦輪によってこれでもかと懲らしめてくれるわ!
 あっタカ丸さん!鍋の用意をしておいていただけますか!これから狩りにゆきますので!

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