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嘘と創作を混ぜて語る日記的なもの
2025/07/06 [08:56:07] (Sun)
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2012/08/13 [12:27:32] (Mon)
池田三郎次
時友四郎兵衛
川西左近

拍手[8回]

 この間の、ものすごく暑かった日、あるだろ。
 あの日はあんまり暑くて午後が休講になったんで、川に泳ぎに行ったんだ。
 久作は確か、図書当番だったっけか?それでいなかったんだよな。
 左近と、しろ、あと常葉と山路で一緒に行った。水練の練習にもなるし、涼しいしってんで、皆乗り気だった。

 大きくて、水がきれいな川だった。
 滝つぼがすぐ近くにあって、涼しい風が吹いてきて、良い場所だったよ。
 いざ泳ぎ始めると、夏だってのに手がかじかむような冷たい水だった。だけどすごく澄み切って綺麗で、思ったより深さもあって、気持ちのいい水だった。
 みんな適度に泳いでは岩の上に上がって体を温めて、また潜って、まあ楽しかったぜ、その時までは。
 水の中での組手の練習とかも面白かったな。――ばっ、ちゃんとやってたって!そりゃ少しは遊ぶ気持ちもあったけど――あっ馬鹿しろ余計なこと言うな!

 ま、まあとにかく。それで、俺がちょうど岩の上で休んでた時。
 左近が急に「うわっ」て叫んで、水から慌てて出てきた。どうしたんだよって笑ったら、

「誰だよ!足引っ張ったの!」

 笑われて顔を赤くしながら、左近がぷりぷり怒って言ったんで、俺たちは顔を見合わせた。
 今しがた水から上がったばっかりのしろはきょとんとした顔で左近を見てる。俺も常葉も岩の上にいる。
 とすると、犯人は今潜っている山路しかありえない。

「山路ー!」

 怒った左近はまた飛び込んだ。山路は滝つぼの近くに顔を出して、「にしし。だぁーいせーいこーう」って笑っていた。
 と、また左近が沈んだ。すぐ浮かびあがって、
「今度は誰だ!」と怒鳴る。
 と言っても、左近の近くには左近しかいなかった。

「水草にでも足ひっかけたんだろ」

 バッカで―、てみんなで笑ってると、左近がまたいきなり沈んだ。
 その沈み方が、ものすごく不自然だった。普通、泳いでる人間って、引っ張られたりしないと急に真下にはいかないだろ。
 渦みたいに沈み込む流れとかもあるけど、その川にはそんな渦はなかった。
 俺たちはすぐ「曲者か!?」って思った。忍術学園に敵対している城だって少なくない。
 俺はすぐ苦無をくわえて飛び込んだ。

 水が、おっそろしくきれいだった。
 だから、よく見えたんだ。

 左近に絡みつく、太い縄のように長い長い、青白い手。
 滝つぼの方からここまでぐうっと伸びてきてて、滝つぼの泡の中にもユラユラと昆布みたいに揺れる青白い手が何本も見えて、その近くに山路の足が見えた。
 俺はもう無我夢中で……なんだよ左近、助けてもらったくせに笑ってんじゃ……バッ、別に泣きそうな顔なんてしてないし!
 とにかく左近の首だか髪だかを引っ掴んで、必死こいて泳いだよ。
 左近も暴れてたけど、ぐいぐい引っ張られて、このままじゃ滝つぼに呑みこまれると思った。
 死に物狂いってああいうことを言うんだな。俺、学園入ってから一番必死に泳いだ気がする。
 学園一の泳ぎ?べっ、別に嬉しくなんてねえよ!




時友四郎兵衛


 あ、ごめん、三郎次が飛び出してっちゃったんでぼくが話すんだな。
 えっなに左近。褒めすぎ?恥ずかしい?ううん……なんかよくわかんないけど、ごめん?

 そうそう、三郎次がね、すごいんだな。
 釣り上げられた魚みたいにずばあって一気にあがってきて。左近を引っ張り上げながら、

「山路!水から出ろ!」

 ってものすごい顔して怒鳴ってて。
 常葉が山路の方に走って行ったんで、ぼく三郎次と一緒に左近を引っ張り上げようとしたんだけど、すっごく重かった。
 しんべエより重かった気がするんだな。
「山路っ!」
 常葉の切羽詰まった声がして、そっちを見たら、山路が必死に岩に抱きついて、足には何か……イカ?みたいに白い長いものが絡みついてて、山路を引っ張ってるみたいだった。
 左近の足にも何かイカが絡みついてるし、ぼくたちだけじゃ山路も左近も連れてかれちゃうかもって思って、誰かー!って叫んだんだな。

 あ、そうだ、思い出したんだな。
 あの時、常葉が「いけどん先パーイ!ギンギン先パーイ!」って叫ぶから、ぼく思わずずっこけそうになっちゃったんだな。
 確かにあの時、七松先輩の「いけいけどんどーん」とか潮江先輩の「ギンギーン」って鳴きご……掛け声が聞こえたけど。

 鳴き声なんて言ってないんだな。左近の聞き間違いなんだな。ぼ、ぼく言ってないです!思ってないです……うぅ





川西左近


 ……あー、しろが七松先輩怖さで泣きそうなんで、続きは僕が話す。
 ていうかお前、言うに事欠いてイカはないだろ、イカは。アホか。

 七松先輩がでっかい声で「どうした!」って叫んだと思ったら、がっしり掴まれてぶん投げられた。
 いや、七松先輩が水から引っこ抜いてくれたみたいなんだけどな、勢い良すぎてぶっ飛んだんだ。
 もっとも、ぶっ飛んだってわかったのは、潮江先輩が受け止めてくれて
 「小平太ぁ!後輩をぶん投げる奴があるかバカタレ!」「ハハすまんすまん!勢い余ってな!」って話てるのを聞いてからだけど。
 溺れかけた直後にジェットコースターみたいなの味わってみろよ。もう何が何だか、目を回してグラグラしてた。
 山路も先輩に助けてもらって、ずぶ濡れでがたがた震えてたな。

 ん、あの……手のことか?
 氷みたいに冷たくて、触れてる所から体の感覚がなくなってくみたいな……感触なんておぞましくて思い出したくもないな。

 あの後、先輩に背負われて医務室に直行したっけな。
 ぼくも山路も、熱出して大変だったよ。

 

先輩のコメント

七松:
池田は面白いな!水の中だと実力三割増しってトコだろう!先が楽しみだな!
しっかし変な光景だったぞ。私にはその手とやらが見えなかったが、水が変な感じに盛り上がって纏わりついてるように見えた。
あそこに仙ちゃんがいればなあ、焙烙火矢で水全部ぶっ飛ばしてやれたのにな!

潮江:
やめんかバカタレィ!下級生まで巻き込むだろうが!
あの後、先生方とあの川に行ってみたが、川はあったが滝つぼはなくなっていた。まあ、妖しの類だったんだろ。妙な気配がしたしな。
――ところで、「ギンギン先輩」やら「イケドン先輩」やら叫んだのは誰だ?先輩の名を掛け声で呼ぶとは良い度胸だ、ギンギンに鍛錬してやる!

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