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嘘と創作を混ぜて語る日記的なもの
2025/07/06 [06:02:51] (Sun)
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2012/09/12 [15:25:11] (Wed)
食満留三郎

拍手[15回]

 んー、まあ話半分に聞けよ?


 いつのとは言わねえが、満月の夜だったかなあ。
 俺も伊作も補習明けで三日寝てなかったから、そりゃもうグッスリ寝てたんだ。
 次の日また別の補習が入ってたから、ガッツリ寝とく必要があったからな。

 ところが、俺は夜中の轟音で叩き起こされた。

 山津波でも起きたみてえなすんげえ音だったぜ。俺は飛び起きて辺りを見回して――衝立の向こう、伊作の寝てるあたりに石っころの山ができてるのを目の当たりにした。
 山っつーか、壁って言った方が正しいかもな。握りこぶしより少し大きめの石が、天井近くまで積み上がってたんだ。

 こりゃあ伊作死んだな、と頭の中の変に冷静な部分で思った。

 なんていうかこう……呆然としちまったんだよ。
 だけどすぐ、山の上で石をかきわける音がして我に返った。

「伊作っ!?」

 あー、俺、石かきわけてるのが、伊作だと思ったんだ。
 だけどそいつは……


 

「……コーちゃん?」


 

 うるっせえな文次郎!俺だって目を疑ったわ!だけど実際目の前で動いてたんだよ!

 ……あーそーだよ、コーちゃんがそりゃあもう必死に、石の山を崩そうとしてたんだ。
 ぶっちゃけ俺はちょっとびびった。
 コーちゃんは骨だし、黒の忍び装束着てるから、なんか亡霊っぽく見えるんだ。
 それが一心不乱に石をかきわけてるんだぞ。ホラ―だろ。
 だけどまあ、コーちゃんが動いたことにビビるのは、伊作助けてから一緒にビビろうと思って……は?だって俺一人でビビるくらいなら誰か道連れが居た方がまだマシだろ。
 それに俺一人だけだと幻覚見てんのかどうかもわかんねえし。

 で、俺も石どけようとしたら、触れねえんだよ。
 石に触れねえの。

 何これ石の幽霊?って思ったんだが、よくよく考えてみりゃあ、天井に届く程の石の山があるのに、衝立からこっち転がってやしねえんだ。
 あんだけの石がうず高く圧し掛かっておいて、衝立が倒れてねえのもおかしい。部屋も壊れてない。

 そもそも、この石の山はどこから来て、どこから入ったんだ?

 いくら熟睡してたって、部屋に忍びこまれりゃ流石に気付く。
 だけど俺は轟音がするまで全く何も感じてなかった。

 ……これはあれか、お化けの類か?

 それにしても、伊作の方だけに、見上げるような石の山の幽霊がのっかってて、俺には夜中疲れてるところ叩き起こされた、だけ。
 ま、結論としてはだ。


「……なんだ、ただの不運か……」


 なんだよ伊作、お前は何も覚えてないんだから良いじゃねえか。大丈夫だって、別に石に埋もれてもお前普通に寝てたから。
 ああ、石に触れない、通り抜けるってことは、何の抵抗もなしに伊作のところまで行けるんじゃね?って思ってな。まあ普通に行けた。前は見えなかったけどな。

 上では相変わらずコーちゃんが一生懸命石を遠くに投げやっててな。ちょっと憐れだったんで、伊作を起こすことにした。

「伊作ー。起きろー」
「……ぅ~ん……あと……半刻……」
「起きろって」
「ぐ~……」
「……。あっ俺ついうっかり傷を放置しちまったあ」
「何だって!ちょっと見せて留さんどこ怪我してるって!?」

 まあ実際放ったらかしにしてた傷があったから、しこたま怒られたな。
 伊作が起きた途端、石の山は消えて、コーちゃんも元通り壁際に立ってた。

 それから何回か……満月の度に同じ事が続いてよう。ちょいと気付いたんだが。

 石の山がデカければデカいほど、次の日からの不運度が高いっていうかな……。
 一度なあ、石ころは少なかったんだけど、デカい岩が伊作の上に乗ってた事あってな。
 コーちゃんはそれは必死にその岩をどけようとしてたんだが、力及ばずってトコだ。

 で、伊作はそれから暫く落とし穴にも落ちない、鳥の糞も降ってこない平和な生活を送っていたんだが、ある日イノシシ罠に引っ掛かって腹に深手を負った。
 覚えてるか?結構な大騒ぎになって、伊作は数日医務室に入院したよな。

 偶然かもしれねえけど、岩が乗ってたのも伊作の腹あたりだった。

 俺は伊作の上の石に触れねえから、普段の生活でしか手を貸してやれねえけどさ。

 毎度必死に、石をどかそうと頑張ってるコーちゃんを見るとなあ……伊作、お前愛されてるよな。

 あん?ああ、今でも満月の度に見るぜ。コーちゃんの邪魔しねえようにさっさと寝てるけどな。
 あ?さあな、俺もコーちゃんが居るところでしか見ねえし、気になるんだったら見に来いよ。

 ただし、絶対に伊作を起こすんじゃねえぞ。

 伊作もこの学園の六年だ、気配がすりゃ起きちまう。コーちゃんが頑張れるのは伊作が寝てる間だけなんだ。

 邪魔すっと、怒ったコーちゃんが夢枕に立っても知らねえぞ。

 


 ……おい、なんでお前ら揃って目を逸らすんだ。


 ここは笑うトコだろ。おい……。

 


 

後輩のコメント

綾部:
え?はあ……ありますよ。大魔王コーちゃん降臨みたいな夢。
とても恐ろしかったですよ。全身から黒い炎みたいの立たせてました。
随分な恨み節でしたけど、気にしないで次の日新たにタ―コちゃんを八つ作ったら、その日の夜の恨み節には随分泣きが入ってましたねえ。
面白いのでもうちょっとやってみようと思います。


同輩のコメント

七松:
コーちゃんは、あー、あれだ!オカンみたいだな!
折角隠してた掠り傷とか、全部どうにかしていさっくんに教えるしな!
おかげでちょっと怪我しただけでも滝に怒られもんじに鍛錬が足りんとか言われいさっくんに怒られ仙ちゃんには笑われ留には呆れられコーちゃんにも怒られるんだ!
わはは、けっこう面白いぞ!
でも最近、ちょーじの枕元に立つことが多いんだよなあ。つまらん!

中在家:
すまん……小平太には周囲を見て動けと、折を見ては注意しているのだが……。
男泣きするコーちゃんの夢を見る度に申し訳なく思う……。小平太には一度、きつく仕置きをして、上等の酒を供えさせようと思う。
……小平太、逃げるな。

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