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嘘と創作を混ぜて語る日記的なもの
2025/07/05 [05:54:07] (Sat)
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2013/06/11 [01:39:16] (Tue)
久々知兵助

拍手[15回]


人喰い桜?あぁ……そうか、この間の騒ぎか。

気になるのは分かるが、綾部、あれは危ないぞ。

 

うーん、そうだな、できれば他言はしないで欲しいのだぁ。

本来はあの桜に近寄ることは禁じられているのだし。

 

 

今の五・六年の一部は、人喰い桜で花見をしたことがある。

まあ、五年は主に七松先輩と立花先輩に強制連行されたというのが正しいんだけどな。

それでも文句を言いながらも酒やら弁当やら用意していたあたり、皆楽しみにしていたのだ。

していたのだが……。


 

その桜の元に着いた時は呆然としてしまったのだ。

一瞬幹なのか壁なのか分からなくなるくらい大きな樹だ。
そこから人の胴より太い枝が何本もせり出して、薄紅の花の重さに優雅に撓っていた。大げさに聞こえるかもしれないが、みっしりぎっしり咲き誇った桜の花で、実際に空はほとんど見えなかった。

しんと静かなその場所で、其処此処にはらはらと落ちる薄紅の花弁が、まるで雪のようで、夢……いや、幻のように美しかった……。

 

桜を前に呆然としたのは俺だけじゃなかったんだが、花より団子の連中も居たことだし、気を取り直して桜を肴に飲み食いをはじめた。

 

「お前たち上に登ってみろ!すごいぞ!地の果てまで桜しか見えん!」

 

恒例のじっとしていられない暴君、七松先輩が早速とばかりに樹上に登っていた。
桜の木は弱いからあまり細い枝は乗るとまずいんだが、そういえばあの桜には細い枝なんて無かったな。一番細くてもしんベエのお腹くらいの太さはあった。

 

あの桜はその、なんと言えばいいか、佇まいだけで尋常でない雰囲気があった。
たとえ何も怪異が起こらなかったとしても、神か、妖しか、人の及ばぬ何かをそこに見たんじゃないか、と思う。

 

七松先輩の声に引かれて、うきうきした様子ではっちゃんと勘ちゃんが立ち上がった。

勘ちゃんは元々好奇心旺盛だからいいとして、はっちゃんは一番七松先輩の被害を受けてる癖になんでこりないんだ?そんなだから三郎にいっつも馬鹿だ馬鹿だと言われるのだぁ。

向こうの方では、潮江先輩と中在家先輩があっという間に樹上に消えて――

 

突然、俺はぞっとするような悪寒に襲われた。

うっかり豆腐を取り落とした時のような戦慄が、背筋に走った。

 

「待て!」

 

咄嗟に叫んだ俺にはっちゃんがびっくりして振り向いて、俺の顔を見た勘ちゃんは樹上に呼びかけた。

流石は勘ちゃん、俺の様子から色々察してくれたみたいなのだ。

 

「先輩!何か異常は!」

「いや、特にない。すごい景色だぞ。桜の枝が十重二十重に連なって、いっそ波涛のようだ。桜の海だな」

「お前にしては饒舌だな文次郎、それ程のものか。見たいのは山々だが一度下りてこい、久々知が何か気になるようだ」

 

一人だけ桜に上らずにいた立花先輩が俺たちの様子を見てか声を上げた。

潮江先輩の訝しげな声がして枝が揺れ、

 

 

――誰も下りてこなかった。

 

 

「……文次郎」

「待て。……小平太」

樹上で先輩たちが言葉を交わすのが漏れ聞こえた。

俺の背中の悪寒は去ってくれない。あんまりいい状況じゃないな、と思った俺の勘を裏付けるように、潮江先輩の声が降ってきた。

 

 

「――下に降りる枝が、……ない」

 

 

 

ん?嫌な予感ってどういうものか?

ああ、ええと、そうだなぁ……食堂で出す豆腐の買い出し係に、善法寺先輩が駆り出されたというのを聞いた瞬間のような……。

え、もういい?そうか?

 

 

えーっと、立花先輩とのやり取りを聞いた内容から察するに、潮江先輩たちからは地面や近くの枝が全く見えない状態らしかった。花を払えば、とか、かぎ縄を使えば、とかそういう問題でもないようで、立花先輩がだんだん険しい顔になっていくのが、まあ、うん、ちょっと怖かったのだ。

それより、何となく気になって周囲を見回した俺は、うっかり気付いてしまった。

 

降り注ぐ桜の花びらの量が、あからさまに増えている事に。

 

学園長先生が登場する時に花吹雪を降らせるだろう、あれより多くて、桜の向こう側は一面薄紅色だったのだぁ。

しかもその時俺は胡乱なものまで見つけてしまった。

 

「勘ちゃん」

「ん?」

「桜の向こうに何かいる」

 

俺の言葉に、全員の視線が岩のような幹の後ろに集中した。

幹の向こう側――一面の薄紅色の吹雪の中に、ちらほらと人影が見えるんだ。

水面に映る影みたいにゆらゆらと揺れていて、……それを見た瞬間、俺はもう二度と生きて豆腐は食えぬかもしれないと思ったのだぁ。

同じ事を思ったのか、立花先輩は間髪入れずに樹上に向かって飛び降りろと言った。上手くすれば命は助かるかもしれん、と。

先輩たちも戸惑ったのか、一瞬の間があいた。
そこに、三郎の珍しく焦った声が滑り込んだ。

 

「――急がないと帰る道もなくなるぞ」

 

思わず振り向いた俺たちの視界の中で、森がどんどん薄紅の花びらに浸食されていく。

雪景色のようだった。
だが積もっているのは儚い色をした花弁で、そんな恐ろしい状況にあっても桜は美しかった。

桜の木の根元には苔むした岩がゴロゴロと転がっていて、足元も見ずに飛び降りれば大怪我は必須、打ち所が悪ければ普通に御陀仏という場所だった。先輩たちが躊躇ったのも当然だ。

このままだと全員、桜に食われるかもしれない。どうする、と俺たちが厳しい顔を見合わせた時だ。
樹上から七松先輩の不思議そうな声が降ってきた。

 

 

 

 

「なあ、この桜、切り倒しちゃダメなのか?」

 

 

 

 

流石は名物。

流石は暴君と呼ばれる男。

恐ろしい事をサラッと言ってのける。

 

あんな壁みたいな木を切り倒すなんて、俺は思いつきもしなかったのだぁ……。

「お前たちは学園に知らせろ」

立花先輩が焙烙火矢を構えながら言ったので、俺は首をふった。桜吹雪の向こうにはまだ辛うじて新緑が見えていたが、なんとなく森には辿り着けないような気がしていたんだ。
 

「いえ、先輩。あの桜を丸ハゲにした方が早いです」

 

 

うん、そこから、桜の伐採計画が始まったのだぁ。

綺麗だったからちょっと惜しいとは思ったが、命には換えられないのだ。

 

立花先輩の焙烙火矢で花と枝を吹き飛ばし、折れかけた枝に勘ちゃんの鎖分銅やらはっちゃんの微塵やらをガンガンぶつけたり、全員で体重かけたりして、足元には枝が積み重なっていった。

折れた枝のぐさぐさになった断面からは赤い水が滴っていた。枝を折った時に吹き出たのを被ったはっちゃんと雷蔵がギョッとしていたから、血だったのかもしれないな。

木霊とかは火やら金気が嫌いって説があるし、割と妥当な戦術だったんじゃないか?

バッキンボッキン景気よく枝を折りまくっていると、地面から何か白く骨張った物が……というか骨が湧きだしてきた。
人骨だ。
それらはカタカタと間接を鳴らしながら立ち上がって、両手を俺たちに向けた。
流石の立花先輩も頬を引き攣らせる光景だったのだ。
 

コ―ちゃん大増殖みたいな光景で、善法寺先輩にちょっと見せてみたかったのだあ。まあ、コ―ちゃん程きれいでもなかったし、あっちこっち欠けてるのも多かったけどな。
ん、うん、たぶん欠けてた部分が死因だろうな。もしかしたら、桜に食われた被害者だったかもしれない。

だけど俺たちはそいつらの仲間入りは絶対に御免だったし、なによりのったり襲ってきて邪魔だったから結構ぞんざいに蹴散らしてたのだ。
すぐ立ち上がってきてすごく面倒だったのだあ。

 

「豆腐っ!」

「何言ってんのへーすけ」

「この世の未練でも込めて殴れば効くかと思ったのだあ。……ん?」

「……効いてるっぽいね」

骨は粉になっていた。

 

それからは、はっちゃんが「ウチのペット達のおやつにしちゃるぞこのっ!」とか言ったり、三郎が「雷蔵雷蔵雷蔵!」って叫びながらコ―ちゃんもどきを倒してて雷蔵にぶっ飛ばされたり、まったく、緊張感のない奴らなのだ。

勘ちゃんは「団子、饅頭、砂糖漬け!」って叫んでたから、後でお土産にあげたのだ。雷蔵は迷いに迷って迷いすぎて、呆れた立花先輩に枝を折る方に専念するよう言われていた。

立花先輩は何を叫んでたかって?

……俺も命は惜しいのだ……。

 

樹上でも何かあったようで、ギンギンとかいけどんとかいう気合がしょっちゅう聞こえていた。
ああ、すまん、何があったかは聞いてないんだ。潮江先輩あたりなら話してくれるかもしれないが。
 

下にせり出していた枝を全部折って、中層に挑もうとした時だ。

 

「仙ちゃーん」

「小平太か、どうした」

 

ミキリ、と、樹上で大きな木の悲鳴が聞こえた。

 

 

「たーおれーるぞー」

 

 

「――早く言わんか莫迦ものっ!!」

 

ちょうど全員でしぶとい枝に重さをかけていた時で、大きな――大きな樹が、俺たちの上に倒れ込んできた。

 


うん、桜はな、それで大体片がついたんだが。

桜じゃなく七松先輩に全滅させられるところだったのだ……。

何とか桜の下敷きを免れた俺たちは猛然と七松先輩に抗議した。

だが、七松先輩はな、桜の木肌を掘り進んでいたおかげで、全身真っ赤に濡れていたんだ。一見血まみれのホラーだスプラッタだ。

それでこう、「なんだぁ、やるか?」と、とても不穏に笑うのだ。

俺たちは反射的に本気で逃げた。

 

七松先輩があの姿のまま学園に帰っていたら、下級生の心に深いトラウマを残しただろう事は間違いない。

正直、桜などより余程命の危険を感じたのだあ……。




 

同級のコメント
 

尾浜:

ええー兵助あの骸骨の群れはめんどくさいで片付けられるレベル超えてんですけどー。

俺わりと怖かったんだけど!倒しても倒しても、ホラ元々死んでるじゃん?だから倒せないしさあ!

ハチとか雷蔵はあんまり細かい事気にしてなかったみたいだけど、俺とか鉢屋涙目だったよ!

兵助が歪みねえ豆腐小僧じゃなかったら、もっとパニックになってたよ……。

あのねえ、想像してみな?大量のコ―ちゃんがのたくりながら迫ってくる所をさ?

……あ、なんか自分で言ってて怖くなってきた。

 

まあ高笑いしながら復讐の作法を語る立花先輩とか、血まみれで「私も混ぜろ!」つって飛び込んでくる七松先輩も、それはそれは恐ろしかったですけどね……。



通りすがりの先輩のコメント
 

小平太:

おお、あれか!あれはなあ、しぶとかったなあ!懐かしいぞ!

樹液があんまり人血にそっくりなんで、ちょっとスイッチ入るところだったしな!なはは!

ん?仙ちゃん達の様子?

そうだな、パッと見まさに地獄絵図だったな!

樹液で一面血の海みたいだったし、その中で骸骨が仙ちゃんたちにワラワラ群がっててな!

仙ちゃん達も当然血まみれっぽくなってたし、まあその割にはのんきそうな気合だったけどなあ。

私が一番真っ赤だったから人の事は言えないけどな!

そのままいつもみたいに笑ったら、五年が全員すごい勢いで逃げて行ってな、あの鬼ごっこはすごく面白かったぞ!

またやりたいな!五年をどっかで見かけなかったか?

 
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