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嘘と創作を混ぜて語る日記的なもの
2025/07/04 [10:43:59] (Fri)
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2016/08/23 [23:41:42] (Tue)
摂津のきり丸


拍手[4回]



 おっ、俺に聞いちゃう?俺は高価いぜ?まずは銭を出してもらお……イテッ!なんだよ乱太郎ぉ、ジョーダンに決まってんじゃん。
 え?目がゼニになってたって?……テヘ?

 あれはなー、あーっと、合戦場に弁当売りのバイトに行った時だったっけ。

 いつもはバカ売れすんだけど、その日は珍しくあんま売れなくてさぁ。出陣ギリギリまで粘ったんだけど三つくらい余っちまったんだ。
 しゃあない、道中で売りゃいいやって寝ぐらに帰ろうとしたんだけど、途中の森で迷っちゃったんだよな。
 そんな深い森でもなかったはずなんで、おっかしいな〜とは思った。
 でも日が暮れる前に抜けないと、って早足になった。

 少しして、馬の声がした。
 それが思ったより近かったもんで、ちょっとびっくりしながら振り向いたんだ。


 森の木かげの、いっとう暗いところ。
 そこに騎馬武者が立ってた。


 それまでひづめの音ひとつしなかったから、けっこう驚いたぜ。

「……そこの」
「あ、ハイ?弁当いかぁっすか?」

 侍かよびっくりさせんなよとか思ってたらいきなりほっそい声出されて、つい反射的に弁当売ってたわ。
 いや〜だってよ〜さっきまで何百回とさけんでたセリフだぜ?もういっそあいさつみたいなもんで、つるっと口から出てたんだよ。

「……では、三ついただこうか」
「おっまいどありィ〜!六文になりやす〜」

 よ〜く見ると、その侍の後ろにも二人、馬に乗った鎧武者がいてさあ。
 陣中でもねーのにフル装備の武者が三人何してんだよ、って思ったけどまーゼニ払ってくれんなら何でもいいし?

「六文……」
「足りぬのではないか」
「しかし道中の飯は必要であろう」

 なーんかボソボソ話してたけど、これはもしや値切られる!?と俺ァ気合入れてたんだ。値切りに負けちゃあ自分の飯も食えねーしな!

「こわっぱ、すまぬが銭は払えぬ」
「はあ?」

 いやこん時すげーガラ悪くなってた自信あるね。
 値切りどころかまさかタダでよこせとか言うんじゃねーだろな?と思って、走って逃げようかと思った時だ。


どろり。

侍の顔面がくされ落ちた。


 ありゃ夢に出そうだったぜ。スーパーアルバイターきりちゃんだって怖えもんはあるのよ。
 誰だってくさった死体なんかまじまじ見ないだろ?おりゃムリヤリ見させられたんだぜ、気の弱い奴だったらキャッと叫んでぶっ倒れるとこだ。見舞金よこせって思うよな。
 あーわりとイケ面のにーさんたちだったんだけど、それがこう、目玉がとけて顔がぜんぶドロッ……て落ちるんだぜ。


「このような有様なのでな」


 さすがにぎょっとしてたら、お侍はまだ肉とかこびりついてる骨の見えた顔、顔……つーかあごをカコッと鳴らしてなんか言ってた。
 今ちょっと思ったんだけど、喉もくされてんのにどっから声出してたんだろな?ユーレイの不思議パワーってやつ?

「弁当だけでは足りぬのではないか」
「ならばほれ、そこなわっぱを喰ろうてしまえばよい」
「それなら銭も払わなくて済むか」

 口々にそんな事言っててさ、俺、絶体絶命!だったんだよな。
 でもさあ、わかるか?わかるよな乱太郎。
 このどケチのきりちゃんを前にしてのタダ発言!
 全くもって聞き捨てならねーことをあいつら言ってくれちゃったワケですよ!

「ハアアアアアアアアアアア???」

「聞き捨てなんねーこと言ってもらっちゃあ困るぜお侍様よぉ、オバケ相手だろうがなんだろうがこのどケチのきりちゃんがタダで物売るなんてことあるわけねーだろ!どケチ舐めてんじゃねーよ!いいか世の中ぁゼニで回ってんだ、ゼニがありゃ大体の悩みは消えるってくらいゼニは万能なんだ!ゼニがありゃメシは食える、あったかい家も持てる、手に職つけるためにあくせくしないでいい!木の根っこかじったり草食ったり泥水のんで腹こわしたりしなくていいんだ!とにかくゼニゼニゼニ!ゼニがあればなんでもできる!お前タダがどんだけ罪深いもんかわかってんのか!?つまり俺の明日のメシがないんだぞ!?飢えたことも着物にも宿にも困ったことなさそーなカッコしといて今日のメシも危うい子供にタカるだあ!?いくらどケチのきりちゃんでもそこまで外道じゃねーよこの坊ちゃん育ち!お前らの着てるもんぜんぶで俺が何年遊んで暮らせると思ってんだっていうかそれマジでいくら?売る気ない?俺のぶんは三割でいいからそれ売ろうぜ!なあなあ!それぜったい良い値で売れるって!そしたらもっと豪華な弁当だって食えるんだぜ、ハイ決定!ほら脱いだ脱いだ!なーにこの天才アルバイターきりちゃんにまかせとけ、いいツテ持ってるからよ!なにボサッと立ってんだよ早く脱げって!身ぐるみ全部な!」

 ……ってとこまで一気に言って気づいたら、めっちゃドン引きされてた。

 なんだよぉお前らまで引くなよ、きりちゃん傷ついちゃう。

 お侍の顔も元のイケ面に戻ってて、なんかこっち見ながらヒソヒソしてるわけさ。

「なんと……あの齢で銭の亡者とは……」
「哀れな……」
「むしろ何か恵んでやらねば尻の毛まで毟られるのではないか?」
「そ、それは」
「ど、どうする。何ぞないか」

 あんだよ、ってにらんだらなんかビクッとするし、オバケのくせにずいぶん肝の小せえやつらだったなー。
 で、最初に声かけてきたにーさんがおそるおそる近づいてきてさ。

「……こ、これで銭の代わりになろうか」

 つって、いやそらもう立派な細工の刀子出してくるからさー!うひょー!こらぁ高く売れるぜえ!やっぱお侍様は違いますなあ!

「もちろんっすよ!まいどありぃ!」
「う、うむ、日々の暮らしにも困っているのだろう、釣り銭はいらんからとっておけ」

 ホッとしたように弁当受け取って、侍のにーさんは俺が何か言う前にささーっと去っていった。あんなに逃げるように去っていかなくても……。
 しっかし、最後までひづめの音しなかったなあ。あの馬もユーレイってやつだったのかね。

 あ?刀子?町に行ってソッコー売ったけど?
 でへへへもうけさせてもらったぜえ、お侍様ってばチョー太っ腹!よっお大尽様!うひょひょひょへへへひひひひ………。




同室のコメント
乱太郎:
 きりちゃーんきりちゃん戻っておいでー。
 ユーレイにまでドン引かれるってきりちゃん流石というか……ゆがみないね……(遠い目)

 うーん、ていうか思ったんだけど、六文ってちょうど三途の川の渡り賃でしょ?
 それもらっちゃったらマズかったんじゃない……?
 ねえきりちゃ、……おーいきり丸〜?おーい。もーきりちゃん目をゼニにしてないで戻ってきてってばぁ〜。
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