嘘と創作を混ぜて語る日記的なもの
2016/02/27 [20:35:53] (Sat)
まあ貴様ら落ち着け。
伊作、説明するからその顔はやめろ。文次郎、小平太、黙れ。特に文次郎、顔がうるさい。
ーーまあ話は、私が幼い頃に遡る。
ある日の事、私は母に連れられ町に来ていた。母が用事を済ませている間、私は表通りで石を蹴飛ばして遊んでいた。
間違えて遠くに石を蹴飛ばしてしまい、慌ててそれを追いかけたのだが。
石が転がって、人の足にぶつかったのが見えた。
やってしまった。
そう思った私は、急いで謝ろうと、走り寄ってその顔を見上げた。
そこから、少し記憶が曖昧だ。
ただ、其れが人ではなかった事、見逃してもらうかわりに何か約束をした事、約束をした証に、私の左手に何か印をつけていった事。
それだけを、断片的に覚えている。
……覚えている、と言っても、その時はすぐに忘れてしまったのだがな。ただ、とても怖い思いをした、という事しか覚えていなかった。
さて、話は二日ほど前に移る。
文次郎、お前が忍務の為に部屋を開けていた朝だ。
朝、私は異様な気配を感じて目を覚ました。
扉の前に、誰か、否。
何かが、いる。
日が昇り始める前、薄明の中、それは妙に黒々とした影を障子に映していた。
外見は、そうさな。
むくむくとした入道雲のように大きく、上は障子からはみ出し、下は、二本の足がこれを支えていた。
襦袢のまま気配を消して起き上がった私に気づいていたのかは知らんが、そやつは声をかけてきた。
石臼を回すような音の混じった、ひどく聞き取り辛い……、重く不気味な声であったよ。
『約束を果たしに来た』
無論私の身に覚えなどない。
だが迂闊に答えてはそやつを招き入れかねんと、私は沈黙を選んだ。
『約束を果たせ』
とにかく極力気配を殺した。何だかよくわからんモノは、下手に手を出さずやり過ごした方が良い。
『約束を果たせ』
そやつは、朝日が昇りきる頃になると、初めて身動ぎした。
『おお、もう日が昇ってしまったか』
『帰らねば』
『また明日、来る』
そう言い残して、そやつは去っていった。
そして、今朝の話だ。
宣言通り、そやつはまた来た。
『約束を果たしに来た』
私はやはり、起き上がって気配を消していた。
来訪を予期していたので、襦袢一枚ではなかったがな。
『約束を果たせ』
『目印をつけたのじゃ。逃れること叶わぬぞ』
『早う来い』
私が返事をしないせいか、今朝のそやつは比較的おしゃべりだった。
『明日また、来る』
そして、やつはまた去っていった。
それから……なあ文次郎、私の左手には、痣があったろう?
そうだ。私は、それを生まれつきのものだと思い込んでいた。
その痣がふとむず痒くなり、はて虫にでも刺されたかと、手を目の前に持ち上げてみるとーー。
痣の部分の皮膚が、……上手く形容できんが。
もこもこと、蠢いていたのだ。
まるでそこに別の生物が貼り付いているかの如くで、大層気色が悪かったものだ。
だが、半ば呆然とそれを眺めていて、ふと、気付いた。
この痣の、奇妙な形。
むくむくとした入道雲に、二本の足が生えたような。
まさか。
その時、痣の形に膨らんだ皮膚がぱかりと割れた。
血は出なかった。痛みもなかった。
ぎょっとして注視した私を嘲るように、それは、嗤った。
『ケケッ』
ーー私は即座に痣に火薬をかけ点火した。
この痣がやつの言う「目印」であるのは明らかであったからな。
まあ、多少、痣と共に肉も吹き飛ばしてしまったがな。あんな気味の悪いものを体に貼り付けておくよりマシというものだ。
焼きながら、私は漸く、過去のーー人ならぬモノとの約束を、思い出したのだ。
正直、それまできれいさっぱり忘れていた。それが普通というものだろう?
ゆえに、この火傷は火薬の調合に失敗したのでも、焙烙火矢の扱いに失敗したのでもない。
まして曲者に焼かれたものなどではないさ。焼こうと思って焼いたのだ。
保健室を騒がせて悪かったな、伊作。
……自分に切除させてくれればよかった?……お前もなかなか凄まじいことを言う男だな。
妖怪の解剖はまたの機会にしておけ。
……ん?
ふ。
……くく、鈍い貴様でも気付いたか文次郎。
これは今日……正確には、もう昨日と言っていい刻限か?その話だ。
……そろそろ夜が明けるな?
さて、貴様らには道連れになってもらおうか。
目印は焼いた。
もうすぐ刻限だ。
やつは、ーー来るかなぁ?
同輩のコメント
七松:
あっはっはっはっは!それがな!もう散々だったんだ!
仙ちゃんは「私は男だあああっ!!!!」て叫んで焙烙火矢投げまくるし、逃げるの超大変だったぞ!いさっくんは逃げ遅れてたみたいだけどな!留三郎が「い、伊作ゥーー!!」っては組人情ドラマやっててな!
もうしっちゃかめっちゃかで面白かったぞ!またやらないかなぁ。
でもなー、なんでか私まで罰当番と補修追加になったんだ。納得できん!私は少ししか……いや!少しも壊してないぞ!
うーん仙ちゃんはまだブチ切れてて怖いから、文次郎に押し付けよう!よし行ってくる!
善法寺:
あーあれねぇ、たぶんもう来ないんじゃないかなあ。
なんだか勘違いだったみたいだし?
はあ~あ、も~あれさぁ、まさか保健室で焙烙火矢乱舞やるとは思わないじゃない……。
ああもう、貴重な薬草がパアだよ、もお~。仙蔵には貸しだなこれは。後で絶対返してもらうからね!
まあ貴様ら落ち着け。
伊作、説明するからその顔はやめろ。文次郎、小平太、黙れ。特に文次郎、顔がうるさい。
ーーまあ話は、私が幼い頃に遡る。
ある日の事、私は母に連れられ町に来ていた。母が用事を済ませている間、私は表通りで石を蹴飛ばして遊んでいた。
間違えて遠くに石を蹴飛ばしてしまい、慌ててそれを追いかけたのだが。
石が転がって、人の足にぶつかったのが見えた。
やってしまった。
そう思った私は、急いで謝ろうと、走り寄ってその顔を見上げた。
そこから、少し記憶が曖昧だ。
ただ、其れが人ではなかった事、見逃してもらうかわりに何か約束をした事、約束をした証に、私の左手に何か印をつけていった事。
それだけを、断片的に覚えている。
……覚えている、と言っても、その時はすぐに忘れてしまったのだがな。ただ、とても怖い思いをした、という事しか覚えていなかった。
さて、話は二日ほど前に移る。
文次郎、お前が忍務の為に部屋を開けていた朝だ。
朝、私は異様な気配を感じて目を覚ました。
扉の前に、誰か、否。
何かが、いる。
日が昇り始める前、薄明の中、それは妙に黒々とした影を障子に映していた。
外見は、そうさな。
むくむくとした入道雲のように大きく、上は障子からはみ出し、下は、二本の足がこれを支えていた。
襦袢のまま気配を消して起き上がった私に気づいていたのかは知らんが、そやつは声をかけてきた。
石臼を回すような音の混じった、ひどく聞き取り辛い……、重く不気味な声であったよ。
『約束を果たしに来た』
無論私の身に覚えなどない。
だが迂闊に答えてはそやつを招き入れかねんと、私は沈黙を選んだ。
『約束を果たせ』
とにかく極力気配を殺した。何だかよくわからんモノは、下手に手を出さずやり過ごした方が良い。
『約束を果たせ』
そやつは、朝日が昇りきる頃になると、初めて身動ぎした。
『おお、もう日が昇ってしまったか』
『帰らねば』
『また明日、来る』
そう言い残して、そやつは去っていった。
そして、今朝の話だ。
宣言通り、そやつはまた来た。
『約束を果たしに来た』
私はやはり、起き上がって気配を消していた。
来訪を予期していたので、襦袢一枚ではなかったがな。
『約束を果たせ』
『目印をつけたのじゃ。逃れること叶わぬぞ』
『早う来い』
私が返事をしないせいか、今朝のそやつは比較的おしゃべりだった。
『明日また、来る』
そして、やつはまた去っていった。
それから……なあ文次郎、私の左手には、痣があったろう?
そうだ。私は、それを生まれつきのものだと思い込んでいた。
その痣がふとむず痒くなり、はて虫にでも刺されたかと、手を目の前に持ち上げてみるとーー。
痣の部分の皮膚が、……上手く形容できんが。
もこもこと、蠢いていたのだ。
まるでそこに別の生物が貼り付いているかの如くで、大層気色が悪かったものだ。
だが、半ば呆然とそれを眺めていて、ふと、気付いた。
この痣の、奇妙な形。
むくむくとした入道雲に、二本の足が生えたような。
まさか。
その時、痣の形に膨らんだ皮膚がぱかりと割れた。
血は出なかった。痛みもなかった。
ぎょっとして注視した私を嘲るように、それは、嗤った。
『ケケッ』
ーー私は即座に痣に火薬をかけ点火した。
この痣がやつの言う「目印」であるのは明らかであったからな。
まあ、多少、痣と共に肉も吹き飛ばしてしまったがな。あんな気味の悪いものを体に貼り付けておくよりマシというものだ。
焼きながら、私は漸く、過去のーー人ならぬモノとの約束を、思い出したのだ。
正直、それまできれいさっぱり忘れていた。それが普通というものだろう?
ゆえに、この火傷は火薬の調合に失敗したのでも、焙烙火矢の扱いに失敗したのでもない。
まして曲者に焼かれたものなどではないさ。焼こうと思って焼いたのだ。
保健室を騒がせて悪かったな、伊作。
……自分に切除させてくれればよかった?……お前もなかなか凄まじいことを言う男だな。
妖怪の解剖はまたの機会にしておけ。
……ん?
ふ。
……くく、鈍い貴様でも気付いたか文次郎。
これは今日……正確には、もう昨日と言っていい刻限か?その話だ。
……そろそろ夜が明けるな?
さて、貴様らには道連れになってもらおうか。
目印は焼いた。
もうすぐ刻限だ。
やつは、ーー来るかなぁ?
同輩のコメント
七松:
あっはっはっはっは!それがな!もう散々だったんだ!
仙ちゃんは「私は男だあああっ!!!!」て叫んで焙烙火矢投げまくるし、逃げるの超大変だったぞ!いさっくんは逃げ遅れてたみたいだけどな!留三郎が「い、伊作ゥーー!!」っては組人情ドラマやっててな!
もうしっちゃかめっちゃかで面白かったぞ!またやらないかなぁ。
でもなー、なんでか私まで罰当番と補修追加になったんだ。納得できん!私は少ししか……いや!少しも壊してないぞ!
うーん仙ちゃんはまだブチ切れてて怖いから、文次郎に押し付けよう!よし行ってくる!
善法寺:
あーあれねぇ、たぶんもう来ないんじゃないかなあ。
なんだか勘違いだったみたいだし?
はあ~あ、も~あれさぁ、まさか保健室で焙烙火矢乱舞やるとは思わないじゃない……。
ああもう、貴重な薬草がパアだよ、もお~。仙蔵には貸しだなこれは。後で絶対返してもらうからね!
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