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嘘と創作を混ぜて語る日記的なもの
2025/07/04 [15:10:50] (Fri)
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2014/08/09 [17:36:42] (Sat)

二ノ坪怪士丸




拍手[5回]



 ……あ、図書室利用者がへると困っちゃうから、この事はひみつだよ……そう……。


 ……その日はね……中在家先輩が実習でいらっしゃらなくて……五年生の不破先輩、二年生の能勢先輩と……ぼく、でいつもの仕事してたんだ……。
 不破先輩がカウンターで……ぼくと能勢先輩が棚と本のチェックしてた……。

 え……そう……まだぼく、棚の並びとか全部覚えてないんだ……。能勢先輩に教えてもらいながらだけど……ふふ……けっこう楽しいよ……。

 なぜかね……能勢先輩はぼくを体の弱い子扱いするんだ……。
 ぼくたちろ組はいつもこんな顔色です……て言ったらね……「虚弱体質ってことか?とにかく倒れられでもしたらこっちが困るんだ、あんま重いものとか持つなよ!」って……。
 でもね……いつもきり丸はすごくテキパキ動いているし……ぼくだってさ……。
 ……そうなの……でもね……ぼくが重いもの持ってたりすると、なんていうのかな……委員会の全員がね……ちょっとハラハラしたような顔でちらちら見てくるんだ……。能勢先輩以外はあんまり口に出したりしないけどね……。
 ぼく……体きたえようかなぁ……。

 えぇと……それでね……棚半分くらいチェックが終わったんだけど、修理が必要な本がけっこうあって……カウンターに修理本いれる箱があるから、それを取りに行ったんだ……。
 ……つまり……棚の方には能勢先輩しかいなかったんだけど……。

 ……ね、図書室ではしずかに、っていうでしょ……ぼくたち図書委員は動くときも音をたてないように、なるべく静かにしてるんだ……もちろん、おしゃべりもなしだよ……。
 だからね……不破先輩とか中在家先輩は動く時ぜんぜん気配がわかんなくて……。いつの間にか後ろに先輩がいてね……うっかり魂をとばしちゃったこともあったなぁ……ふふ……。先輩方はやさしくてね……ぼくが慣れるまでは……て言って、最初のころは動く時にわざと音を立ててくれたりしたんだ……。
 そのおかげかなぁ……今は音がしなくてもあんまりびっくりしなくなったよ……。

 そう……図書室ってそれくらい静かなところなんだ……。
 だから……何か音がするとすごく大きく聞こえるんだ。


バサバサバサッ


 ……急に……本がたくさん落ちるような音がして……不破先輩のとなりで箱を持ったまま、びくってしちゃったよ……。
 音がした方に行ってみたら……自然に本が落ちた……のかなぁ……けっこうたくさん落ちててね……。


「わあ……」


 ぼくの後ろから顔を出した能勢先輩も眉をぎゅっとよせてたよ……。


「はあ、怪士丸」
「あ、はぁい……」


 だいたい意訳すると、「あぁくそ、派手に落ちたな……はあ。怪士丸ちょっと手伝ってくれ」って言いたかったんだと思うよ……。えぇ……?……ほら……おしゃべり禁止だから……アイコンタクトとジェスチャーでだいたいわかるようになってさ……。
 まぁね……変な並べ方してると崩れるのは当たり前だし……慎重に並べ直したよ……。
 能勢先輩も確認して、よし、……て思ったとき……かな……。



バサバサバサッ



 ……せっかくきれいに並べ直した本がまた……落ちた。
 ぼく……能勢先輩の眉間にしわが一本うまれた瞬間を見ちゃった……。
 伏木蔵なら「スリルぅ~」て言うのかな……。

 ……能勢先輩はだまってテキパキ片付けたよ……。
 棚をね……にらむみたいにして、壊れてるところとかないかって調べてたみたいだけど……見つからなかったのかな……首かしげて「おかしいなあ……」て顔してたよ……。

 そしたら……不破先輩がひょいって覗いてきて「どうしたの?」……て。
 能勢先輩は眉よせたまま、小声で応えてた……。


「不破先輩。この棚なんですけど、ちょっと用具委員に見てもらった方がいいかっうわあ!!」


 きゅうに能勢先輩が転んだんだ……。


 ……変な転び方だったよ……まるで足をひっぱられたみたいな……。


 えっ……てびっくりして……何が起きたのかぼくが理解する前に……ね。



「わぅっ……!?」





今度は……ぼくの足が……「ひっぱられた」。





「えぇ、二人とも大丈夫!?」

「いたたぁ……えぇ……」

「何しやがる、誰だ!」


 そのときは……何が起こったか分からなくて、目を回してたぼくのとなり……能勢先輩が顔を赤くして怒りながら……手を捕まえようとしてた。
 そう……「足をひっぱられた」……足をひっぱった手があったんだよ……。




 棚に並べた本のすきま……。

 幅が一寸もないそこから……伸びる、手が。




 ゆゆゆ、ゆうれいだぁ……!


 そうだよね……そう思うよね……。ぼく……久しぶりに腰ぬかしたよぅ……。

 ……泣きそうな僕と、忍たまのイタズラだと思ってるらしい能勢先輩の頭の上……また、本がどさどさふってきたんだけど……それが、さっきぼくたちが並べ直したところの……本でね……。

 きゃー……て思って……あわてて頭をかかえてぎゅっと目をつぶったんだけど……。
 そしたら……えぇとぉ……そのね……すごく馬鹿にしたような感じの……笑い声が聞こえて……。
 びっくりして目を開けたら……開けたら、開けたらね……。






 目の前の本棚……本の隙間から、チラチラ覗く、目……!



 ……まったくまばたきしない……血走った、目が……。






 ぐにゃっ……て、笑うみたいに、歪むんだ。






 おかしいんだ……おかしいんだよ……。
 あれだけ、目がはっきり見えてるなら……目のほかに、鼻だってうっすら見えていいはずでしょ……?

 それなのに……あれじゃまるで、……目だけが暗がりに浮かんでるみたいな……。

 ……あれ……ぜったいゆうれいだよ……!


 あっ……魂とんじゃう……。
 ふーっ……て意識が遠くなったぼくのとなり……ふってきた本に埋もれてぷるぷるしてた能勢先輩が、がばって顔を上げた。
 それで……。







「ふっっっっっっ、ざっけんな!!!!」



 ……ものすごい剣幕で、棚向こうに怒鳴ったんだ……。
 あのね……図書委員会でね……いちばん規律に厳しいのって、実は能勢先輩なんだ……。




 能勢先輩……まだ忍たまのイタズラだと思ってたんだぁ……。



 びっくりして抜けかけてた魂もひっこんだよ……。

 そしてね……なんと、ゆうれいは……能勢先輩の一喝で……消えてっちゃったんだ……。
 ……ふふ……でしょ……能勢先輩すごいでしょ……。

 ……手がすぅっ……て消えたのを見て、能勢先輩はギョッとしてたから……やっぱり、オバケとかゆうれいだと思ってなかったみたい……。
 棚向こうを見た不破先輩も、誰もいないって……とまどってたし……。


「すいませぇーん、遅れましとぁっ!?」

「きり丸!?」


 とつぜん入口からきり丸の声がして……あ、きり丸はね……アルバイトで学費稼いでいるから……そう……自分で学費稼いでるんだって……すごいよね……。そのアルバイトで遅れることが時々あるんだ……。


「わービックリした、なんスかあの逃げてったの。ネズミ?にしちゃデカいような」

「きり丸、大丈夫かい?なんともない?」

「?いえ~別にだいじょぶっスけど?って腰ぬかしてどうしたんだよ怪士丸。ついでに能勢先輩」

「誰がついでだ!」


 ……きり丸が、きょとんとしながらそう言って……それで再起動した能勢先輩がテキパキしゃきしゃき……て本を片付けて、幽霊さわぎは終わったわけなんだけど……。


 なぁに平太……図書室こわくないの……って?
 だってね……えへへ、中在家先輩とね……不破先輩が……二人そろってもう大丈夫って言ってくださったから……きっと、大丈夫だと思うんだ……。
 ……そう……二人ともすごくやさしい笑顔でね……。

 ……え?……中在家先輩も……だよ。
 え……うぅ~ん……たしかに中在家先輩が笑うのは、怒ってる時だって……言うけどぉ……。
 たしかにね……ちょっと迫力ある笑顔だったかな……とは思うけど……。

 ……先輩がたがそろって笑って「大丈夫」って言ったときは……本当に……ね、今まで、大丈夫だったから……。
 書庫の壁にひび入れた犯人探ししたときとか……図書室で潮江先輩と食満先輩がケンカ始めちゃったときとか……上級生の大乱闘で図書室がまきこまれそうになったときとかさ……。

 だいじょうぶだよ……図書室のルールをちゃんと守れば、先輩たちすごくやさしいよ……。
 ……たまに御伽草子とか読んでくれたりもするんだぁ……楽しいよ……。

 もちろんだよ……図書室利用者、お待ちしてまーす……。








きり丸:
 んん?なに?なんだよ?こないだのネズミ騒ぎのこと?
 怪士丸が腰ぬかしてたあれだろ?

 ……へええ~、ネズミじゃなくてオバケだったんだ、アレ。
 捕まえて見世物小屋に売り飛ばせばゼニになったかなぁ。くっそ、捕まえときゃよかったぜ。

 んな怖がんなくてもさ~、アレが図書室から出てったのはおれが見てるワケだし、もういねーよ。
 ん、あ、うーん……それに、中在家センパイと不破センパイが、なんかおフダ?みたいなの、目立たないトコに貼ってたし。あれネズミ除けの札かと思ってたぜ。
 あー、怪士丸は怖がりだから怪士丸からは見えないところだけどさ。


 むしろ、もう一回出てきたら今度は逃げだす程度じゃすまねーと思うけど。


 だってよ、怪士丸、けっこー怖い思いしたんだって?

 ソレくわしく聞いた不破センパイと中在家センパイが、縄縹の縄、パァンって鳴らしながらイイ笑顔してたもん。
 んで、それ見た五・六年のセンパイたちが、すげー引きつった顔してたもん。

 うーん、アレ捕まえたら売れね―かなー、センパイに聞いてみよっかな。
 変なモン好きな金持ちのオッサンって案外いるからさー。

 なー、売っちゃダメだと思うか?






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